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シナジー戦略

  • 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
  • 4月11日
  • 読了時間: 7分

更新日:5 日前




概要

  • シナジー戦略とは、「自社の要素に他社の要素が加わることで自社単体で得られる以上のパフォーマンスを実現する、理想と現実のギャップを埋める優先順位づけされた行動集」。自社単体ではなく他社と協働しながらパフォーマンスを実現していくことを前提とする点が、シナジー戦略の最大の特徴

  • シナジー戦略の本質は、「自社を深く理解していなければ幻想に終わる最高難度の経営戦略」、「シナジーは数式ではなく人間の行動により実現される」、「シナジー実現時のインパクトは唯一無二」の3つ

  • シナジー戦略のプロセスは、「1.自社の持ち味やらしさ・ならではの把握」、「2.シナジーを実現可能なターゲット事業者の抽出と探索」、「3.当事者間の交渉」、「4.シナジー実現に向けた行動」、「5.シナジー実現」である。特に「1.自社の持ち味やらしさ・ならではの把握」における自社の強み(他社に勝るパフォーマンスを生む要素)を客観的に評価・把握することが非常に重要である

  • シナジー戦略の本質、シナジー戦略のプロセスと要諦を理解し、シナジー戦略を活用すべきか決断するために有用な問いに対し事前に解を持つことで、シナジー戦略を活用すべきかの決断を容易にできるとTS&Co.は考えている




シナジー戦略の本質


はじめに、シナジー戦略とは何かについて整理したい。

シナジーとは「自社の要素に他社の要素が加わることで自社単体で得られる以上のパフォーマンスを実現すること=相乗効果」だ。

従って、シナジー戦略とは、「自社の要素に他社の要素が加わることで自社単体で得られる以上のパフォーマンスを実現する、理想と現実のギャップを埋める優先順位づけされた行動集」である。

自社単体ではなく他社と協働しながらパフォーマンスを実現していくことを前提とする点が、シナジー戦略の最大の特徴と言えるだろう。

M&Aや資本業務提携といった戦略を検討する際に検討されることが一般的だが、シナジー戦略の考え方はそれ以外の場面においても常時頭に入れておくべきテーマである。


では、シナジー戦略を活用すべきか決断するために理解しておきたい、こうした特徴を持つシナジー戦略の本質とは何か?TS&Co.は、以下の通り考えている。


自社を深く理解していなければ幻想に終わる最高難度の経営戦略

シナジー戦略は、自社単体ではなく他社と協働しながらパフォーマンスを実現していくことを前提とする戦略であるが、他社について思考を巡らせる前に、まずは自社を深く理解する必要がある。著者が過去経験してきた失敗事例における失敗の原因は、多くの場合、自社を深く理解することを軽視したことが真因であった。

まずは自社を深く理解する。そのうえで、自社と親和性が高く、シナジー実現可能性が高い他社を抽出・探索し、交渉を経て、シナジーを実現していく順番で取り組まなければ、シナジー戦略は幻想に終わるだろう。

しかしながら、自社を深く理解するのは簡単ではない。ましてや、自社に加え、他社も深く理解しなければならないシナジー戦略はより難度が高まる。これが、シナジー戦略が最高難度の経営戦略と考えられる所以だ。


シナジーは数式ではなく人間の行動により実現される

実務では多くの場合、シナジーは、売上シナジー・コストシナジー等と財務諸表の勘定科目毎に構造化されその効果が定量化・正当化される。シナジーは、自社の要素に他社の要素が加わることで自社単体で得られる以上のパフォーマンスを実現することであることから、そうした形で定量化されることは当然のことだ。しかしながら、定量化された効果が何を原因として実現されるのかについて解像度が低いまま、効果が正当化されているケースが散見される。

効果は、人間の行動により実現され、人間の行動への洞察(インサイト)を踏まえ定量化されていなければ、その効果を正当化することはできない。この点、よくある失敗として留意したい。


シナジー実現時のインパクトは唯一無二

理想的なシナジー戦略は、自社の要素に他社の要素が加わることで自社単体で得られる以上のパフォーマンスを実現する。

最高難度ではあるが、数ある経営戦略の中でも、シナジー実現時のインパクトは唯一無二と言えるだろう。




シナジー戦略の立案プロセスと要諦


シナジー戦略を活用すべきか決断するためには、実際にシナジー戦略をどのようなプロセスで進めるべきか、各プロセスにおける要諦は何かについても理解しておく必要がある。

TS&Co.は、シナジー戦略のプロセスと要諦を以下の通り考えている。


1.自社の持ち味やらしさ・ならではの把握

先述の通り、シナジー戦略の出発点は、自社を深く理解することだ。具体的には、自社の強み・弱み、企業文化と企業理念、経営戦略、現場オペレーション等を細部まで再確認していく。

この段階では特に、強み(他社に勝るパフォーマンスを生む要素)を客観的に評価・把握することが非常に重要だ。

そして、自社の強みとの親和性が高く、自社の強みをさらに強化できるターゲット事業者と共に、顧客への提供価値を高めながらシナジーを実現していくのである。


2.シナジーを実現可能なターゲット事業者の抽出と探索

次に、自社と他社の深い理解を踏まえ、シナジーを実現可能なターゲット事業者をリストアップしていく。

この段階では特に、抽出範囲を広く取り、シナジー実現に向け協業可能なターゲット事業者を探索していくことが重要だ。

多くの場合、実際に探索をはじめてみると、想像以上にターゲット事業者の探索が難航する。そのため、予め抽出範囲を広く取っておくのである。


3.当事者間の交渉

ターゲット事業者とのシナジー実現には、M&Aや資本業務提携の場面のようなハードな交渉からソフトな交渉まで、当事者間の交渉が必ず求められる。

この段階では特に、人間の行動への洞察を踏まえたターゲット事業者との間で実現可能なシナジーの構造(構造化された施策毎の定量インパクトを取りまとめたもの)を整理し、シナジーを実現するために絶対に調整すべき条件を事前に把握したうえで、妥協なく、この条件を調整していくことが重要だ。

例えば、現場の営業活動における当事者間の相互顧客紹介やクロスセル等について、口頭レベルではなく、契約書に明文化し確実に実行できる状態を確保する等が考えられる。


4.シナジー実現に向けた行動

シナジーは、人間の行動により実現され、人間の行動への洞察を踏まえ定量化されなければ、その効果を正当化することはできない。

この段階では特に、スピードが求められる。ここまでに相応の協議や意志疎通を経てきたとはいえ、両社は元々異なる背景を持ったプレイヤーであり、現場はその正当性に懐疑的であったり様子見・お手並み拝見といったスタンスでいることが一般的である。

従って、できるだけ早く、当該シナジー戦略の正当性を実証する結果を示すことが重要だ。それにより、現場の空気も徐々に変わっていくこととなる。


5.シナジー実現

1~4のプロセスをそれぞれ実行しきった結果、自社の要素に他社の要素が加わることで自社単体で得られる以上のパフォーマンスを実現することができる。




シナジー戦略を活用すべきか決断するために有用な問い


最後に、シナジー戦略を活用すべきか決断するために有用な問いを紹介しよう。

シナジー戦略の本質、シナジー戦略のプロセスと要諦を理解し、以下のような問いに対し事前に解を持つことで、シナジー戦略を活用すべきかの決断を容易にできるとTS&Co.は考えている。


  • 自社の持ち味やらしさ・ならではを客観的に評価・把握できているか?

  • 自社のパフォーマンス、企業文化と企業理念、経営戦略、現場オペレーション、実行状況を正しく把握できているか?

  • 自社と親和性が高く理想的なシナジーを実現しうるターゲット事業者は何か?

  • 自社は当該ターゲット事業者にどのような魅力的な提案ができるか?当該ターゲット事業者とのシナジーはどの程度の定量インパクトが想定されるか?シナジーが実現できない可能性をどのように提案に盛り込むか?

  • シナジーを実現するために、当該ターゲット事業者との交渉において絶対に調整すべき条件は何か?

  • 当該ターゲット事業者とのシナジー実現におけるキーマンは誰か?キーマンにどのような行動を牽引して頂きたいか?

  • 当該ターゲット事業者とのシナジー実現における主要成功要因(KSF)は何か?


シナジー戦略は、最高難度の経営戦略である一方で、シナジー実現時のインパクトは唯一無二だ。

改めて、シナジー戦略を活用すべきか、再考されてみては如何だろうか?



著者

澤 拓磨(さわ たくま)

TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO

TS&Co.株式会社 代表取締役

経営変革プロフェッショナル


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