未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な世界にいかに立ち向かうか?
- 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
- 4月2日
- 読了時間: 7分
更新日:4 日前
概要
CEOをはじめとするリーダーには、「未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破すること」が求められる
未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破する際は、8つのプロセスを経る。プロセス4(シミュレーションする)以降は、平時の戦略思考・問題解決思考と変わりはない
最も重要な点は、何が何でもこの状況を突破してみせるという意志であり、意志が新たな洞察(インサイト)を生み戦略仮説を深める
未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破した先には、これまでは見えなかった新たな世界や景色、新たな挑戦への扉を開ける姿が待っている
CEOをはじめとするリーダーに期待される、最も挑戦的・創造的で実行し結果を出した場合のインパクトが大きい課題
結論から述べると、少なくとも自社・当事者にとって「未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破すること」が、CEOをはじめとするリーダーに期待される、最も挑戦的・創造的で実行し結果を出した場合のインパクトが大きい課題だとTS&Co.は考えている。
多くの場合、CEOをはじめとするリーダーは、既存の延長線上にはない理想的な目標の実現を株主をはじめとするステークホルダーと約束し、約束した結果を実現することを期待される。
そして、期待に応え、期待を超えるために戦略や計画を策定し、リーダーシップを発揮しながら結果を創出していくこととなる。
しかし、著者自身も現在進行形でTS&Co.グループのCEOとして直面している課題だが、事前に計画した通りに事業が進捗することはほぼない。
CEOとしての責任を果たすべく、計画期間中に約束した結果を出したければ、計画時には着想・想定していなかった挑戦的・創造的で実行し結果を出した場合の定量・定性インパクトの大きい課題の発見・解決が必要となる。
すなわち「未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破すること」が求められる。
例えば、著者が過去に支援させて頂いた以下のようなケースがその典型例だ。
事例1:このまま成り行きの経営をしていると確実に業界再編の波に飲み込まれ、既存事業規模の維持や自主独立経営を維持できない。しかしながら、過去数10年間にわたり、毎期安定的に売上や利益を創出できる環境に全社的に最適化してしまっており、この状況を突破するための組織能力が自社にはない。この状況をどのように突破すればよいだろうか?
事例2:海外市場の開拓を企図し海外現地子会社を設立したはいいものの、過去数10年間にわたり、数10億円の営業損失・当期純損失を計上している。一方、日本本社(親会社)は、過去の同期間並びにそれ以前においても安定的に営業利益・当期純利益を創出しており財務体質も健全。従って、海外現地子会社の事業再生(ターンアラウンド)を主導する組織能力が自社にはない。この状況をどのように突破すればよいだろうか?
事例3:自社株式の株式譲渡取引が完了し、新たな株主(オーナー)の下、経営を再出発させることとなった。新たな株主の経営手腕・スタイルを学習させて頂きながら、これまでも実現してきた事業計画を引き続き実現していこうと考えていたが、新たな株主より提示された事業計画では、既存の3倍を上回る売上高・利益水準が期待されている。それでいて、経営の現場・最前線でリーダーシップを発揮するのは、新たな株主ではなく既存自社メンバーだけである。はっきり言って、既存自社メンバーだけで、既存の3倍を上回る売上高・利益水準を実現できる自信はなく、イメージもわかない。この状況をどのように突破すればよいだろうか?
未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破する方法
では、具体的に、どうすれば未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破できるのか?TS&Co.が考える方法を共有したい。
尚、本論考では、仮説思考、課題・論点思考、シナリオプランニング等、各種専門テーマ・知識を紹介することは目的としていないため、必要最小限の記述にとどめている。
1.基本に立ち返る
経営(結果を出し続ける行動)の基本である結果(過去)と原因(現在・未来)、原因の構成要素であるリーダーシップとマネジメント、そしてリーダーシップとマネジメントの構成要素である理想、現実、戦略・計画・決断、実行の各要素に現況を当てはめてみる。すると多くの場合、足りないのは戦略(理想と現実のギャップを埋める優先順位づけされた行動集)であることに気づくこととなる。何が問題なのかがわからないことこそ極めて深刻な問題であるが、この段階では、この状況を突破するための問題は戦略であると発見することがゴールだ。
2.戦略仮説を立てる
戦略仮説を立てる際、経営変革や戦略コンサルティングの実務では、仮説思考、課題・論点思考を駆使する。具体的には、現時点で得られている情報をもとに、問題(理想と現実のギャップ)、課題(解決すべき問題。議論対象とすべき課題を論点と呼ぶ場合もある)、解(解決策・施策・打ち手・答え)、結論(優先順位づけされた行動集・回答集)として、ツリー上に構造化する(イシューツリー・論点ツリー等と呼ぶ場合もある)。すると多くの場合、未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況の突破口が見えてくる。
この段階では、多少なりとも突破口・希望が見える状態に至ることがゴールだ。
3.戦略仮説を深める
戦略仮説を深めていくべく、まずは追加の情報収集(インプット)を行う。その際に有効な情報取得先は、①類似状況の課題解決方法が体系的に紹介された書籍、②類似状況の課題解決事例(2025年以降はAI等を活用しより広く多様な事例を収集可能となると想定される)、③類似状況の課題解決実績を持つ経験者(先輩CEOをはじめとするリーダー等)となる。そして、インプットをもとに、戦略仮説を深める(問題、課題、解、結論をツリー上に構造化していた情報を修正していく)。尚、戦略仮説を深めるうえで最も重要なのは、専門テーマ・知識や分析力等のスキルではなく、何が何でもこの状況を突破してみせるという意志であり、意志が新たな洞察(インサイト)を生み戦略仮説を深める。
すると多くの場合、当初の戦略仮説で設計していた課題が修正されることとなり、結果、実行すべき行動も変わってくる。これが戦略仮説を深める効用だ。
4.シミュレーションする
このプロセス以降は、平時の戦略思考・問題解決思考と変わりはない。このプロセスでは、深めた戦略仮説をエクセルシート等を活用し、財務諸表、財務指標、事業計画等に定量化する。
多くの場合、ここまでのプロセスを一定水準で正しく行えていれば、状況は、既知・未経験(外部のアドバイザーを起用する場合は経験済みとなる場合もある)・有先例な(課題が正しく特定されていれば、大抵の状況は、先人の過去事例が存在している場合が多い)、リスクが認識され、ある程度予見可能な状況となっている。
5.戦略・計画を決断する
多くの場合、この段階ではまだシナリオが複数存在する。しかし、一度に選べるシナリオは1つだけだ。従って、CEOをはじめとするリーダーや戦略・計画実行者の意志に基づき1つのシナリオに決め、それ以外のシナリオを断つこととなる。
尚、実行時は必ずしも計画通りに物事が進捗する訳ではないため、選ばなかったシナリオにいつでも軌道修正できるよう、情報管理を忘れてはならない。
6.実行する
戦略は実行されてはじめて原因となり結果を生むため、深め、意志を乗せた戦略を徹底的に実行していく必要がある。
多くの場合、意志を乗せた戦略となっていれば、当該戦略を仮説検証したいと思う好奇心やワクワク感が実行者を強力に動機づけすることとなる。
7.戦略仮説を検証し続ける
ここまで来れば、平時の戦略実行実務と何も変わりはない。当たり前のことを当たり前にやり抜くのみである。
8.結果を出す
1~7のプロセスを通じて、CEOをはじめとするリーダーは約束した期待に応え、期待を超えることができるはずだ。
未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破した先に待っている世界
こうしたプロセスを経て、未知・未経験・無先例な不確実で予見困難な状況を突破した先には、一時の満足感と根拠ある自己効力感(実績・解法をはじめとする増大した経営資本と実行力等が根拠)、そして何より、これまでは見えなかった新たな世界や景色、新たな挑戦への扉を開けることができる。
著者
澤 拓磨(さわ たくま)
TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO
TS&Co.株式会社 代表取締役
経営変革プロフェッショナル
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