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理想の戦略

  • 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
  • 4月3日
  • 読了時間: 8分

更新日:4月11日



概要

  • 企業経営において、理想の戦略は、決してCEOをはじめとするリーダーや経営企画部門だけのものではなく、大多数のビジネスパーソンが関心を抱くべきテーマ

  • 理想の戦略とは、7つの要件を満たす戦略を指す

  • 理想の戦略を追求する出発点として、「短中長期のビジョンを100%実現できる戦略」の可能性を否定してはならない。その否定が、戦略の想像性・創造性に蓋を閉める

  • CEOをはじめとするリーダーが7つの要件を満たす理想の戦略を追求し実践する際の時間配分は、事業計画等の計画開始前と計画開始後で分けて考える。計画開始前はリーダー自身も徹底的に理想の戦略を追求すべく業務時間の80%程度を配分、計画開始後は週に1度程度の頻度で実施する実行結果の進捗管理と戦略仮説の修正にのみ関与すべく業務時間の20%程度を配分する、優先順位づけされた時間配分を推奨

  • リーダーの責任は、約束した結果を出すことであり、実行なくして結果を出すことはできない。従って、計画開始前に徹底的に理想の戦略を追求したのであれば、計画開始後は当該戦略の実行に集中すべき




なぜ理想の戦略に関心を抱くのか?抱くべきなのか?


戦略とは、「理想と現実のギャップを埋める優先順位づけされた行動集」だ。

企業では、日々、経営戦略、競争戦略、イノベーション戦略、マーケティング戦略、M&A戦略、DX戦略、組織戦略、サステナビリティ戦略、会計戦略、税務戦略、人事戦略等の●●戦略がコミュニケーション上飛び交っている。戦略は決して、CEOをはじめとするリーダーや経営企画部門だけのものではない。従って、戦略に対し、大多数のビジネスパーソンが一度は関心を抱くはずだ。


企業経営において、なぜ理想の戦略に関心を抱くのか?抱くべきなのか?、TS&Co.は以下の理由を想定している。


  • 全ての企業が、顕在的・潜在的な夢や理想、ビジョン、目標を抱き実現を望んでいるため

  • 全ての企業は、現有経営資本で実現可能な最高のパフォーマンスを実現したいと考えるため

  • 戦略は、経営の最終結果に少なからぬ影響を与えるため

  • 自社の経営資本は有限なため

  • 目標を実現するには、顧客をはじめとするステークホルダーに競合他社ではなく自社を選んで頂く必要があるため

  • どんなに魅力的な夢や理想を持っていても、戦略がなかりせば、実現性を確信できず意志力を獲得できないため


では次に、理想の戦略とは何か?について述べたい。




理想の戦略とは何か?


結論から述べると、TS&Co.は以下7つの要件を満たす戦略が「理想の戦略」だと考えている。

著者は、企業経営を担うCEOであり、顧客(日本を代表する大手企業や公的機関)の経営変革支援や戦略コンサルティング・サービスを提供する経営変革プロフェッショナルでもある。その立場から戦略の本質を考察し得られた示唆だ。


1.短中長期のビジョンを100%実現できる戦略

戦略とは、「理想と現実のギャップを埋める優先順位づけされた行動集」であり、もし短中長期のビジョンを100%実現できる戦略なのであれば、理想の戦略であることに疑いの余地はない。

無論、短中長期のビジョンを100%実現できる戦略など存在しえない。しかし、理想の戦略を追求する出発点として、その可能性を否定してはならない。その否定が、戦略の想像性・創造性に蓋を閉めることとなる。


2.戦略立案者をはじめ実行に関与する全てのステークホルダーの意志が乗った、真の組織的実行力を引き出す戦略

戦略は、実行され、はじめて結果として具現化され評価対象となる。そして、戦略は、実行に関与する全てのステークホルダーの意志が乗ることで、真の組織的実行力を引き出す。

著者自身も過去に経験したが、例えば、戦略立案者と企画担当役員、CEOだけの意志が乗った戦略では、現場のハートに火をつけ、真の組織的実行力を引き出すことは難しい。従って、この点も理想の戦略には欠かせない要件だ。

著者が過去支援させて頂いた複数社の事例では、この点を前提として、可能な限り戦略立案プロセスに主要部門のキーマン(次世代リーダー等)に参画頂き、実行段階に入った際には戦略立案者と現場の触媒役を担って頂いた。また、全社向け戦略共有会をオフラインとオンラインを併用しながら4回に分け実施する(コロナ禍であり、日本だけでなくAmericas, APAC, EMEAとグローバルに事業展開されていたため)等の工夫を通じて、理想の戦略を追求した。


3.最高のパフォーマンスを最少の経営資本で実現できる戦略

CEOをはじめとするリーダーは、常に自社の経営資本が足りず、本来であれば実行できたであろう戦略機会を見送り悔しい思いをしている。つまり、どれだけ期待値の高い戦略であろうと、実行したくとも実行できない戦略に価値はないのだ。

そのため、感度の高いCEOをはじめとするリーダーは、最高のパフォーマンスを最少の経営資本で実現できる戦略を渇望し、見逃さない。従って、この点も理想の戦略には欠かせない。


4.短中長期の競争環境で勝利でき、持続的な競争優位性を構築できる戦略

企業経営・事業の世界では、理想を実現するために、顕在的・潜在的な競合他社との競争を避けることはできない。従って、事業の現場では、いかに顧客に競合他社ではなく自社を選んで頂くかといった競争視点で戦略が捉えられることが多い。著者自身、経営変革支援・戦略コンサルティングの実務において戦略を想起する際は、競争視点を強く意識している。

競争視点で戦略を捉えた場合、最も重要なのは、今日・明日の市場にて顧客に競合他社ではなく自社を選んで頂くことだ。但し、競争環境は常に変化しており、新規参入者や代替品がある日突然現れたり、青天の霹靂とも言える規制変更がなされることもある。従って、そうした如何なる事業環境の変化にも対応できる、堅牢で持続可能な競争優位性(違い)の構築が求められる。この点も理想の戦略には欠かせない。


5.戦略実行期間・時代において、業界・地域等を問わず、あらゆるベンチマーク企業よりも優れたパフォーマンスを実現できる戦略

地球市民である企業は、株主等ステークホルダーの承認を得ながら、定款で定めた事業目的の下、自由に事業ポートフォリオを設計できる。そうであれば、地球上のあらゆる企業よりも優れたパフォーマンスを実現できる戦略は非常に好ましく、理想の戦略と言える。

こうした背景もあり、優れたCEOをはじめとするリーダーは、しばしば他業界・他地域にベンチマーク企業を求め、健全な競争を仕掛けたり戦略の模倣を試みる。この傾向は、昨今の業界の垣根を超えた異業種間競争の常態化や外資系企業による日本企業への買収提案増加等の影響もあり、加速している。


6.当初立案した戦略が誤っていたとわかった時に、速やかに軌道修正できる戦略

大前提として、一定のリスク(想定される結果のバラつき)・不確実性(リスクと違い確率分布を特定できない)に挑む戦略は、想定通りの全ての結果が創出されることはない。つまり、当初立案した戦略はほぼ100%誤る。

従って戦略は、誤りがわかったタイミングで速やかに軌道修正できる想定で立案されていなければならない。戦略立案時には、戦略シナリオを3~5つ程度作成しておきたい。この点も理想の戦略には欠かせない。


7.CEOをはじめとするリーダーや組織に成長を促し、未来の経営の可能性を最大化できる戦略

企業は人により経営・運営され、戦略は人により立案される。従って、人の成長は企業の成長や戦略立案能力の向上に直結する。そして人は、今の自分の能力を超えた課題解決に挑み、結果を出すべく全力を尽くすことで最も成長する。

理想の戦略は、こうした「人に成長を促す挑戦的な性格を持った戦略も内包した戦略」であるとTS&Co.は考えている。




理想の戦略をどこまで追求し、どの程度時間配分すべきか?


ここまで述べた通り、理想の戦略に関心を抱き、7つの要件を満たす理想の戦略を追求し実践する企業は、競合他社を大きく上回るパフォーマンスを短中長期的に実現できる可能性がある。


しかしながら、CEOをはじめとするリーダーは多忙であり、自社の組織能力も有限で必ずしも戦略立案実務に熟達したプロフェッショナルがリーダーのネットワーク下に常に存在する訳ではない。従って、理想論はわかったが、そうは言っても「理想の戦略をどこまで追求し、リーダーとしてどの程度時間配分すべきか?」といった相談を頂戴することがある。


それに対しTS&Co.では、事業計画等の計画開始前と計画開始後で分けて考える必要がある旨をまずはお伝えする。

そして、計画開始前はリーダー自身も徹底的に理想の戦略を追求すべく業務時間の80%程度を配分、計画開始後は週に1度程度の頻度で実施する実行結果の進捗管理と戦略仮説の修正にのみ関与すべく業務時間の20%程度を配分する、優先順位づけされた時間配分を推奨している。

リーダーの責任は、約束した結果を出すことであり、実行なくして結果を出すことはできない。従って、計画開始前に徹底的に理想の戦略を追求したのであれば、計画開始後は当該戦略の実行に集中すべきだと考えているからだ。


TS&Co.は今後も、顧客が7つの要件を満たす理想の戦略を追求し実践する際の一助になりたいと考えている。



著者

澤 拓磨(さわ たくま)

TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO

TS&Co.株式会社 代表取締役

経営変革プロフェッショナル


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